文部科学省【社会教育の在り方に関する特別部会】で部会長をつとめています
今年の6月、文部科学省中央教育審議会に対して、当時の盛山正仁文部科学大臣から【地域コミュニティの基盤を支える今後の社会教育の在り方と推進方策について】が諮問されました。
そして、その諮問への対応については、私が分科会長をつとめる【生涯学習分科会】が行うこととされ、その分科会に設置されたのが【社会教育の在り方に関する特別部会】で、私は部会長を務めています。
10月25日に開催の第3回会議では、明治大学農学部教授の小田切徳美委員に、「農村における『地域づくり』の実態と課題-社会教育と社会教育人材への示唆-」と題して報告していただきました。
続いて、立命館大学産業社会学部教授の柏木智子委員に、「共生社会の実現と社会教育」と題して報告していただき、【社会教育人材を中核とした目指すべき社会教育の在り方について】意見交換を行いました。
小田切委員は、農村は【人の空洞化】【土地(利用)の空洞化】【ムラの空洞化】の3つの空洞化に加えて【誇りの空洞化】を乗り越える【地域づくり】が不可欠であり、その要素を①人材づくり、②場(コミュニティ)づくり、③しごとづくり、と説明されます。
そして、農村における人材育成の具体的対応として、①[古くから]公民館活動(社会教育)、②[少し前から]ワークショップ(地元学)、③[少し前から]都市農村交流(交流の鏡効果)、④[最も新しい]高校魅力化、の4つがあると紹介されました。
そして、2010年以降は、①新しい内発的発展、②外部人材としての「関係人口」、③地域内経済循環、④プロセス重視、による【新しい地域づくり】の台頭があると指摘されました。
この日は①と④に焦点を当てられて、【プロセス重視視点から見る農村人材】について、①寄り添い型支援人材(非専門家)、②専門家型支援人材、③プロセス・マネージャー型支援人材、の意義と、社会教育人材の関連性を提起されます。
そして、【農村における「地域づくり」の到達点】として、多様な人材による【ごちゃまぜ】とも言える【にぎやかな過疎】であると展望されます。
オンラインで参加された立命館大学教授の柏木智子委員は、【共生社会の実現と社会教育】について、まずは、「共生社会、民主的で公正な社会」とは、「人種・民族・ジェンダー・階層(経済的資源・地位・学歴)・年齢・地理的居住地・個人的特性による分断と格差のない、多様な人々の『参加の保障』がなされている社会」と提起します。すなわち、社会経済的背景の多様な仲間との共生を実現する社会であると。
また、それを実現する【公的資源分配に向けたメタガバナンス】の要素は、①広い代表性と声の担保:正統性の確保、②声を整理し公的意思へ:妥当性の確保、③公的意思の法規・政策・制度への反映:実効性の確保、と指摘します。
そして、【民主的で公正な社会形成の構図】の中に、社会教育人材と社会教育行政の役割を位置づけています。こうして、人々の地域肯定感は自己肯定感や地域への愛着を高めることから、「地域の活性化」を学校と地域の連携とともに、広域地域の発展と協働により促すことが望ましいと指摘します。
その後の意見交換では、愛媛県新居浜市教育委員会生涯学習センター長の関福生さんをはじめとして、お2人の報告が、多くの実践を理論的に整理したものであると受け止めたとの感想が多く寄せられ、その上で、実践の実態や課題や課題解決の方向性を、社会教育及び社会教育人材と結び付けて考えていくための視野が広がるようなやりとりとなりました。
私としては、個人的には、これまではオンライン参加でいらした小田切先生と、この日は本当にお久しぶりに対面でお目にかかれたことが幸いでした。
小田切先生とは、私が三鷹市長在任中に国土交通省国土審議会の委員としてご一緒したことがあり、国土計画について審議する機会を共有していました。
また、この日は大学2年生の東琴乃委員とも、先日、読売新聞10月17日の「教育ルネサンス」というコーナーで、東さんが実践している『喜入マナビバプロジェクト つわぶき」の活動が取材されたことを語り合いました。
東さんたちの活動は、「中高生ら主体『学びの場』」という記事になったところ、私はコメントを求められ、「19歳の東さんは、子どもたちの学びの場を作るため、中高生中心の団体を運営している。こうした実践は、社会教育に子どもや若者が参加することの意義や可能性について、特別部会の議論でも説得力を与えてくれるだろう」と話したことがコメントとして紹介されました。
こうして、思いがけず、東さんとお仲間による若者の地域活動が紹介された記事に私のコメントが紹介されたことを光栄に思います。
今後も、この特別部会の部会長として、円滑な進行と審議の充実に向けて、その役割を一生懸命に努めたいと思います。