地域ケアネットしんなかで【難聴と認知症】についての地域向け講演会を開催しました
私がボランティアをしている地域ケアネット新川中原(ケアネットしんなか)では、11月には学びの機会が続いています。
その1つは、年に1度、委員会の後に開かれている学習会です。
その企画を担当するのが、私が副代表として担当している【サポート分科会】です。
今年度に入り、どんなテーマが適切か、話し合いを重ねました。
この数年のテーマとしては、実践している医師による【在宅医療】、認知症の人に寄り添う【ユマニチュード】という関わり方、在宅避難を含む防災対策など、地域で【誰ひとり取り残さない】ための取組みや心構えなどを選んできました。
そして、今年、複数のメンバーから提起されたのが、【難聴と認知症】というテーマでした。
たとえば、ケアネットでボランティアをしているメンバーで、自分自身が難聴を自覚して補聴器を使っているけれど、以前よりも意欲減退などの影響を感じているとの問題提起がありました。
また、難聴になってから、極端に外出が減り、会話が減り、いわゆる引きこもりの状態になっている近隣のひとがいることから、【難聴】の生活への影響について考えたいとの声が上がりました。
そこで、ケアネットの取組みの主体も、対象も、難聴に悩む人が少なくないことから、正しい知識を得る学習会にしようということになり、【難聴と認知症】をテーマに選びました。
市役所の事務局のメンバーと協働して講師をさがしたところ、身近な杏林大学医学部耳鼻咽喉科学教室の増田正次准教授が、まさに【難聴と認知症】について研究されていることがわかりました。
そして、幸いにも講師を引き受けてくださいました。
増田先生は、私たちが日常的にはなかなか見ることができない耳のつくり、聴こえのしくみをミクロの世界を見るように映像で説明してくださいました。
そして、「耳のために良い食べ物は何か?」などのクイズで楽しみながらお話を進めました。
たとえば、ナッツ類はよいようです。
特に、聴こえの仕組みは、まさに脳と密接につながっていることを説明されました。
目で見ること、耳で私たちには音や音楽、特に多様な人の声を聴こえるためには、脳との関係が重要だ増田先生は説明されます。
こうして、難聴は、私たちの日常生活における認知に障害をもたらし、五感による総合的な認知のチカラの1部を損なう可能性があります。
そこで、聴覚の衰えは、活動意欲の減退をも促してしまうのです。私たちは、この難聴と認知症の関係について、もっと関心を持つ必要があるのです。
高齢期にはいわゆる【老眼】になる人は多く、それはメガネをかけると比較的早く改善できます。
しかしながら、難聴の人にとって、補聴器をつけることにはメガネよりも抵抗感があり、その使用ができずにいる人がほとんどです。
そこで、増田先生は、メガネの場合に度数を検査して丁寧に合わす必要があるように、補聴器についても、1人ひとりの難聴の特徴に合わせて適切なものを選ぶ必要があると話します。
確かに、補聴器は決して安くはないことから、購入をためらう人は少なくないですし、せっかく購入しても聴こえが改善されない時には、ショックはさらに高まります。
医師への相談は不可欠ですね。
増田先生は、【補聴器で脳を楽しく活性化 聴脳力アップ!】というメッセージをくださいました。
ユーモア溢れるメッセージです。
また、講演の中でびっくりしたのは、耳はその皮膚や垢によって、細菌や悪い影響のあるものが耳に入るのを防いでいることから、むやみに耳垢を取ろうとして、耳の皮膚を傷つけない方がいいということです。
【耳の皮膚】を大切にすることが耳の健康に重要だとのことです。
どうしても耳垢が気になる時には、耳鼻科で処理してもらうことを勧められました。
また、増田先生ご自身が、大変にゆっくりしたテンポで、明快にお話をされている姿に、私たち聴衆は気づきました。
医学の専門的な内容についても、増田先生は本当にわかりやすく話してくださいました。
私たちは、難聴の人に対してはもちろんのこと、人と話す時には、ゆっくりと明瞭に話すことが不可欠だということを、確認しました。
そして、難聴の傾向を自覚したら、医師による検査や診断に基づく適切な対応をすることの大切さも再認識しました。
難聴による聴こえの課題が、認知に与える影響は、認知症をもたらすことにもつながる可能性が高いことから、1人ひとりの予防的対応が不可欠なのです。
参加者からは、「難聴・失聴は、長寿社会にあって、誰もに起こる症状であるならば、決して誤解することなく、正しく対応する必要があることがわかった」という声が多く、視覚だけでなく、聴覚にも関心とケアをはらいつつ、心身の健康長寿を実現していこうという思いを共有しました。