藤原章夫・文部科学事務次官と対話しました
文部科学省を訪問し、藤原章夫事務次官と面談しました。
中央教育審議会の第12期の任期は3月上旬までであり、【生涯学習分科会長】及び【社会教育の在り方特別部会長】として、報告に伺いました。
2024年6月25日に、文部科学大臣から中央教育審議会に【地域コミュニティの基盤を支える今後の社会教育の在り方と推進方策について】の諮問があり、それ以降は、生涯学習分科会の中に設置された特別部会での審議をおおむね毎月1回の頻度で開催して深めています。
その諮問が提起された趣旨は、以下の通りです。
●1949年6月に社会教育法が制定されてから75年が経ち、自治体や関係機関・団体等をはじめ、個人の要望や社会の要請に応え、社会教育の振興が図られてきました。
●一方、社会情勢は大きく様変わりし、現代においては、人口減少・少子化の深刻化、地域コミュニティ・交流の希薄化、デジタルトランスフォーメーション、グローバル化の進展等により、将来の予測が困難な時代となっており、学校・社会が抱える複雑化・困難化した課題の解決や、人生100年時代における共生社会や「こどもまんなか」社会の実現に向けた対応が求められています。
●高校や大学等の進学率の高まりや様々な学習機会の増加など、社会教育に求められる役割やニーズが変化しています。
●2023年6月に【第4期教育振興基本計画】が閣議決定され、一人ひとりの豊かで幸せな人生と社会の持続的な発展に向けて、「2040年以降の社会を見据えた持続可能な社会の創り手の育成」と「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」という総括的な基本方針が掲げられました。
●この実現に向け、社会教育による「学び」を通じて人々の「つながり」や「かかわり」を作り出し、協力し合える関係づくりの土壌を耕しておくことで、持続的な地域コミュニティの基盤を形成することが求
められています。
●社会教育の拠点として社会教育施設の機能強化や、社会教育主事・社会教育士等の社会教育人材の養成及び活躍促進等を通じた社会教育の充実を図る必要があります。
そして、この間、
●2024年6月に、第12期生涯学習分科会での議論の整理及び社会教育人材部会のとりまとめが提出され、社会教育の連携分野や担い手が多様化し裾野が拡大する中、地域コミュニティの基盤を支えるために社会教育人材は重要な役割を担っており、その質的向上・量的拡大に向けた養成及び活躍促進の在り方について今後の施策の方向性が示されています。
これらの方向性を土台とし、次の事項を中心に審議することが求められています。
1.社会教育人材を中核とした社会教育の推進方策について
(社会教育人材を中核とした目指すべき社会教育の在り方/社会教育主事・社会教育士の養成の在り方/社会教育主事・社会教育士の役割・位置付けの明確化)
2.社会教育活動の推進方策
(地域と学校の連携・協働の更なる推進方策/公民館、図書館、博物館等における社会教育活動の推進方策/青少年教育施設等における青少年体験活動の推進方策/地域コミュニティに関する首長部局の施策や多様な主体が担う活動との連携・振興方策/共生社会の実現に向けた障害者・外国人等を含めた社会教育の推進方策)
3.国・地方公共団体における社会教育の推進体制等の在り方
(社会教育を総合的に推進するための国の体制の在り方/社会教育を総合的に推進するための地方公共団体の体制の在り方/社会情勢の変化を踏まえた社会教育に関する現行法令の在り方)
この日、私は、藤原事務次官に、現時点では求められている審議事項の内、社会教育が直面する状況や課題を踏まえつつ【1.社会教育人材を中核とした社会教育の推進方策について】について年度末までに一定のとりまとめをする段階であることを報告しました。
そして、今後、【2.社会教育活動の推進方策】【3.、国・地方公共団体における社会教育の推進体制等の在り方】について審議を開始して、鋭意、審議を深めていく予定であることを伝えました。
実は、藤原事務次官は、かねて中央教育審議会の事務局を所管する【総合教育政策局長】を務められていらっしゃいました。
その時期には【教育振興基本計画特別部会】が設置され、私はその副部会長を務めていました。
そして、【生涯学習分科会】も担当されていたので、折々に【地域コミュニティの基盤としての社会教育】の意義を共有するとともに、それを推進していくための課題や条件整備について対話する機会をもっていました。
その後、初等中等教育局長を務められていた際には、【地方教育行政に関する有識者会議】の座長を務めていたこともあり、【コミュニティ・スクールの推進と地域学校協働活動】における地域住民の社会教育活動との関係についても問題意識を共有していました。
そして、2024年6月には文部科学事務次官として、文部科学大臣を支えて【地域コミュニティの基盤を支える今後の社会教育の在り方と推進方策について】の諮問に関わられたことになります。
そうしたご縁もあり、藤原事務次官は、私の経過報告について、とても熱心に傾聴してくださいました。
さらに、2月21日に答申された【我が国の「知の総和」向上の未来像 ~高等教育システムの再構築~】に基づく今後の政策形成やその実現においても、【社会教育と高等教育の密接な連携】が有用であるとの私の問題意識に共感してくださいました。
ちょうどこの日は、私と、社会教育特別部会の事務局を務めている高木地域学習推進課長、委員の明治安田生命の金澤部長が参加した座談会が掲載されている、月刊『社会教育』誌の3月号が刊行されて手元に届いたばかりでした。
そこで、その掲載誌を持参したところ、ぜひ読みたいと関心をもっていただきました。
この時期は国会開会中で、藤原事務次官におかれては日々ご繁多なごようすでしたが、まさにピンポイントで面談の時間を割いていただいたこと、そして、短時間でも濃密な対話のひと時を得たことに深く感謝いたします。

