岸本周平・和歌山県知事のご逝去の報に接し、心から哀悼の意を表します
和歌山県知事をされていた岸本周平氏のご逝去を悼み、謹んで哀悼の意を表します。
今となっては、私が最後に岸本知事とお目にかかることができたのは、2024年8月5日(月)のことでした。
この日、岸本知事は、奈良県の山下真知事とご一緒に、埼玉・千葉・神奈川・佐賀の各県副知事と、当時の工藤内閣府副大臣を訪問され、令和7年度政府予算編成等に関して、特に保育士給与の原資となる公定価格の見直し等に関する要望書を提出され、私はこども家庭庁参与として同席しました。
エレベーターホールでお待ちしていると、「清原さん、お久しぶりです。ふるさと和歌山の為に日々、頑張っていますよ」と明るい笑顔で声をかけてくださったことが心に刻まれています。
私が岸本さんと初めてお目にかかったのは、2000年9月のことでした。
私が市内在住の大学教授として、三鷹市の情報都市づくり委員会の委員長として設立を提案したのが【三鷹産業プラザ】でした。
それが、国の中心市街地活性化事業の第1期に採択されて、当時の森喜朗内閣総理大臣が視察されることになり、財務省から経済産業省の情報政策担当課に出向されていた岸本さんが随行されてこられたのです。
控え室での対話の中で、情報都市づくりの話題のほかに、岸本さんのご出身が和歌山県ということがわかり、私の父の出身が和歌山県であることから話が弾み、年賀状のやり取りが始まりました。
その後、岸本さんは退官されて、地元和歌山県選出の衆議院議員になられました。
そして、2013年4月5日に私が第183回国会【衆議院内閣委員会】で、いわゆるマイナンバー制度法案が審議される際に三鷹市長として自治体の立場からの参考人に招致された時には、なんと、岸本議員の質問を受けるというご縁があったのです。
その委員会での参考人は、堀部政男・一橋大学名誉教授、須藤修・東京大学大学院情報学環学環長、清水勉・日本弁護士連合会情報問題対策委員会委員長と私の4人でした。
岸本議員から、私は2つのご質問をいただきました。
【地方の職員が個人番号を扱う際に、認証というものをどうやっていけばいいのか、例えばそれはプライバシー保護の観点からどうすべきであるか。】
これについて、私は以下のように答弁しました。
【住基ネットを初め、このようなネットワークで個人情報を保護し、しかも無用な漏えいを防ぐために、三鷹市の場合では、職員を限定して現時点ではICカードを配付し、また、暗証番号については、ランダムに更新をして特定できないように防いでおります。
なお、間もなくいわゆる静脈認証を導入する予定でおりますが、何よりもヒューマンエラー、悪意がなくてもですね、それも防がなければなりませんので、そのことについては大変注力して、研修及び、もっと細かく言いますと、職員の選任についても市長としては責任を持っております。
他の自治体も同様に、何よりも、個人情報の保護のみならず悪用を防ぐための取り組みをしておりますので、今後ますますそのような取り組みが強化されるべきである、このように認識しています。】
2つ目の質問は以下の通りです。
【(住基ネットワークからマイナンバー制度への)移行の際に一番大変なのは地方公共団体で働かれる職員の方なんですね。
実際、住基をつくられるときに本当に悲しいことが起きまして、地方公共団体の職員の方が何名かうつ病になられたり、過労死で亡くなられています。(中略)こういう大きなシステム開発ですから現場にしわを寄せていくということが多うございますが、これについて清原市長から一言お願い申し上げます。】
これについては次のように答弁しました。
【自治体の職員に温かいお気持ちで寄り添っていただく御質問で、感謝申し上げます。
私たち公務の仕事というのは、何よりも住民本位で取り組まなければいけません。ただ、守秘義務、個人情報の保護、そして何よりも人権侵害をしないように努めるということが第一義的です。(中略)御指摘のように、夜遅くまでの取り組みが続き、私の方にも深刻な疲労が訴えられました。
私は、適切な人員配置、そして、何よりもメンタルヘルスについて、このカードの取り組みのみならず、全般的に市民課の取り組みは重要でございますので、そのような健康管理には、実は精神科医の相談員をふやしまして対応し、市長を初め全員でメンタルヘルス研修も受け、辛いとか苦しいとか困ったということを言いやすい職場づくりを進めております。ほかの市町村も同様でございまして、このような取り組みが適切に進むように、今後も努力をしていきたいと思います。】
岸本さんの衆議院議員としての、こうした委員会でのご質問に片鱗が表れていますように、【国民・市民の視点】【自治体・自治体職員の視点】に立って、課題を考えていらしたことがわかります。
私は、こども家庭庁参与として、2024年7月からこども家庭庁長官官房地方連携室長に着任された吉村顯さんと日々ご一緒にお仕事をしていますが、吉村室長は、直前まで和歌山県の総務部長をされていて、岸本知事を支えてこられた方です。
こうして、間接的ですが吉村さんとお仕事をする中で、岸本知事との新たなご縁を感じてきました。
突然のご逝去で、ご本人はもちろん当惑されていることと拝察しますし、ご遺族様、和歌山県民の皆様、吉村室長を含む、ご縁のあったすべての皆様の動揺やお悲しみの深さは計り知れないものがあります。心からお見舞い申し上げます。
4月16日に通夜式、16日に葬儀・告別式が挙行されるとのことです。
私は参列は叶いませんが、岸本周平さんとご縁をいただいた者の1人として、真心を込めて追悼いたします。
