御苑の緑の中、令和元年を迎えて
新天皇がご即位され、元号が平成から令和へと移り、世の中が10日間の連休となっている中、私は本当に久しぶりに新宿御苑を訪ねました。連休中の新宿御苑には外国人観光客の楽し気な外国語の会話が聞かれる中、さわやかな5月の風が吹きぬけています。
首都東京の副都心である新宿区から渋谷区にまたがる広大な園内には、新宿門から入ってすぐに、ここが都心かと思われる水辺の風景があります。木立が陽の光を妨げている薄暗さに目を凝らすと、黒い水に木立が姿を映し、小鳥のさえずりが緑を揺らしています。
私は20代の1970年代に、慶應義塾大学の法学部政治学科、大学院法学研究科・社会学研究科で学んでいた頃、文献を千代田区の神保町の書店で探し、そのあとで新宿御苑のベンチで本を読みふけりました。政治学や社会学の理論に関する文献を読むとき、現実の社会構造や社会問題の「るつぼ」であろう都心に身近に在りながら、自然の息吹が溢れる新宿御苑は、思考と考察における「客観」と「主観」の往復を支えてくれる空間でした。
4月29日を任期の最後に市長の職を離れた私にとって、しばらくぶりに訪れた新宿御苑は、若い時のように文献を読むのではなく、往来する人や自然に囲まれつつ、「来し方行く末」に関する思考と考察における「客観」と「主観」の往復を保障してくれるような気がしました。
市長として、毎日の公務を果たす中ではなかなか得られなかった「自分だけの時間」であり、それは大げさでなく、私が新たな使命を感じ取り、自分としての生き方を考える力の源泉を与えてくれたように感じます。
プラタナスの並木道は、私の20代の頃より幹が太くなった木がしっかりと根を張り、これからの私の今ひとたびの「青春時代?」を応援してくれるようにしっかりと立っています。