消防育英会の奨学金での学業終了者たちのお手紙を読んで。
私が今年の6月から評議員を務めている公益財団法人消防育英会は、消防活動に協力して死亡(重度障がい)した一般人、消防職員、消防団員の子どもに返還不要の奨学金を支給する育英制度を運用しています。
今年度は、大学生(短大生・専門学校生を含む)66名、高校生58名、中学生28名、小学生41名に支給しています。
それぞれに占める東日本大震災の際に亡くなった消防関係者の子どもの比率は約5割です。
9月に発行された『消防育英』第93号には、学業終了者からのお便りが掲載されています。
岩手県の女性は、「春からは、父と同じ消防士になります。女性消防士として、地域住民の方々に安心感を与えられる消防士になれるように日々訓練に励みます。そして、皆様に恩返しをしていきたいと思います。」と伝えています。
群馬県の男性からは、「私は高校二年の夏に、勤務中の事故で父を亡くしてしまい、奨学金を受け取りました。(略)この春から吾妻広域消防に勤務することが決まり、幼い頃からの夢が叶いました。」との報告があり、いずれも、消防関係で亡くなった父の消防の仕事を受け継いでいます。
岩手県の匿名希望者は、「福祉施設の就職先が決まったのは父の月命日でした。父が力をくれたのかなと思いました。(略)最後にお母さん。悩んでいる時、話を聞いてくれて本当にありがとうございました。これからは親孝行できるように頑張りたいと思います。」と、両親への感謝を書いています。
宮城県の女性は、「あの(東日本〕大震災で父と家を失くし、すべての思い出の品を失くしました。(略)父が消防団に入っていたおかげで消防育英会からたくさんのご支援をして頂き、行きたい高校、専門学校までも、無事卒業することができました。」と寄せており、東日本大震災の被災者の想いがわかります。
消防育英会の事業は、消防という公務中に保護者を失った子どもたちの学びを支援するとともに、就職へと誘う有意義な育英制度であり、こうした受給者の声には、その意義があらわれていると受け止めます。