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文部科学省中央教育審議会の法科大学院等特別委員会が「法学未修者教育の充実について 第10期の議論のまとめ」を公表しました。

文部科学省中央教育審議会の法科大学院等特別委員会が「法学未修者教育の充実について 第10期の議論のまとめ」を公表しました。

私が委員を務めている文部科学省中央教育審議会の「法科大学院等特別委員会」が、今期約2年間の審議内容をまとめた「法学未修者教育の充実について 第10期の議論のまとめ」を公表しました。

法科大学院では、裁判官、検察官、弁護士を務める法曹を養成しています。
しかしながら、大学卒業後2年〜3年の課程で、修了して司法試験を受験しても必ずしも全員が合格できるわけではない難関であることから、法曹を志望することは時間的にも経済的にも負担が大きいことが課題として指摘されていました。
そこで、法科大学院等特別委員会では、この間、法学部3年(法曹コース)+法科大学院2年のプロセスを幹とする 5年一貫教育制度の創設を検討し、令和2年度から本制度がスタートしています。

また、司法試験の在学中受験資格の導入により、学生の時間的・経済的負担の軽減が図られてきました。
それと同時に、人生100年時代を迎えて、デジタル化が進むポストコロナ社会では、益々多様な法的 サービスの提供が求められていることから、幅広い知見を有する法律人財の量的・ 質的拡大のニーズが顕在化していると言えます。
したがって、大学の学部で法学を専攻していない、あるいは法曹以外の職業に就いている社会人など「法学未修者」が修学しやすい環境整備が課題になっていました。

未修者の実態として、入学者全体に占める社会人・非法学部出身者(法学未修者)が減少傾向にあり、各2割未満となっています。
司法試験合格率も法学既修者との差 が顕著で、累積合格率は既修者が74.9%に対し、未修者は44.8%であり、 さらなる対応が必要となっていました。
そこで、今期の審議では、未修者については、習熟度の違い等を踏まえた上で、複数の選択肢を用意し、 個々の学生にとって最適と考えられる方法を選択できる ような学修環境を提供することが重要であることから、「多様な経歴や能力に配慮した学修者本位の教育の実現」を提起しました。

そして、法学未修者教育の課題はすべての法科大学院に共通する課題が多いことから、各法科大学院が有する経験やノウハウ等を共有し、 法学未修者教育の充実にともに取り組む為に、「法科大学院間の協働による全体の教育水準の向上」を提起しました。
委員には、未修者を対象にした教育をしている法科大学院の教員だけでなく、実際に社会人から法科大学院に進学して現在は弁護士をされている複数の未修者当事者がいてくださったことが心強かったです。
しかも、コロナ禍の今期にあっては、法科大学院ではオンライン授業やオンデマンド授業が実践されたこともあり、委員によるデジタル教材の試作に基づく活用に向けた審議も行いました。

私は、かねて政府の司法制度改革本部の「裁判員・刑事検討会」及び「公的弁護検討会」の委員を務めていました。
裁判員制度の導入に際しては、衆議院法務委員会で参考人として招致され、意見陳述した経験があります。
そこで、裁判員制度施行10周年を迎えた2019度以降、裁判員裁判を含む刑事裁判及び民事裁判を多く傍聴してきました。
実際の裁判を傍聴する中で、司法の現場の国際化、情報化、高齢化等の現状を認識しました。すなわち、原告・被告に外国人、高齢者、障がい者が増えていること、ICTや新しいビジネスに関連する事案が増加傾向にあることなどを確認したことから、実感として、法学に詳しいだけでなく、幅広い社会変動による事案に対応可能な多様な法曹人財が必要であると考えています。

今期の「法学未修者教育の充実について」の取りまとめが、法科大学院の取り組みに寄与できれば幸いであると、委員の一人として心から思います。 

https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/houka/1388525_00001.htm

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