「三鷹市きれめのない認知症支援をめざして」研修会で基調講演を行いました。
12月2日午後7時から杏林大学大学院講堂で杏林大学医学部付属病院・北多摩南部医療圏地域拠点型認知症疾患医療センター主催「三鷹市きれめのない認知症支援をめざして」研修会が開催されました。
この研修会は、東京都認知症疾患医療センター運営事業の一環で、東京都の補助を受けて、認知症疾患医療センターが所在する三鷹市の認知症の人へのきれめのない支援を行うために、必要な知識・技術の習得や地域支援の推進を目的として開催される研修会です。
3回目を迎えた今年度は「認知症とともに暮らせる地域に向けて」がテーマとされ、同センターのセンター長であり杏林大学医学部高齢医学教室の教授でもある、神﨑恒一先生から、
「清原さんが三鷹市長当時に医師会、地域包括支援センター、杏林大学病院、市内の病院、社会福祉協議会や市民の皆様による支援団体などと市がともに進めてきた認知症の取り組みを踏まえつつ、これからの取り組みに向けた期待を話してください」との依頼を受けました。
そこで、私は「認知症と共に暮らせる地域に向けて〜誰一人取りのこすことなく住み慣れたまち・三鷹でいつまでも〜」と題する約40分の基調講演を行いました。
講演の構成は以下の通りです。
1.「認知症と共に暮らせる地域」に求められる「当事者」の視点
2.「認知症施策推進大綱」とチームオレンジ
3.「認知症にある人とこれからなる人三鷹連絡協議会」
4.三鷹市の強み
5.三鷹市が直面する課題
6.「認知症と共に暮らせる地域に向けて」未来を切りひらくために
講演では、認知症当事者の声として、丹野智文さんと佐藤雅彦さんの著書の言葉を紹介して共有しました。
また、三鷹市内の活動として「認知症家族支援の会」と「おれんじドア・三鷹」の事例を紹介しました。
三鷹市の強みでは、
●認知症地域連携
●認知症サポーター養成
●認知症にやさしいまち三鷹の啓発事業
●認知症初期集中支援推進事業
●「知って安心認知症ガイドブック」の配布
●在宅医療・介護連携事業
●在宅医療と後方支援病床の確保
●市民団体、社会福祉協議会ほのぼのネットや地域ケアネットワークのサロンなどによる認知症のある人や家族がほっとできる場の提供
などを報告しました。
特に、ちょうど10年前の2011年11月に開始された、かかりつけ医、専門医、地域包括ケアセンター、市役所の連携による「認知症地域連携」の三鷹市・武蔵野市での取り組みは、神﨑先生はじめ医師会等の皆様による実証研究や実践があったことによって、「もの忘れシート」を活用した日本で初めての事例となり、全国に普及することになりました。
私の基調講演の後、神﨑恒一先生の進行で会場との意見交換が行われました。
会場には認知症のある人に向けた医療・介護・福祉に関わる活動をしている専門職や市民の方が約50名参加されました。
認知症のある人やその家族との活動をしている市民の皆様からは、認知症に対する誤解が偏見につながることから、とにかく正しい理解を広げることが大切であること、認知症のある人やこれから認知症になる人に向けた活動を継続し広げていくときには「人財」確保などの課題があることが提起されました。
また、「最近の論文ではヨーロッパで認知症が減少しているとのことであるが、日本の動向はいかがか」との質問が寄せられ、神﨑先生から、
「ヨーロッパの減少傾向の理由は現在の研究では定かではありませんが、杏林大学病院の患者さんの動向では初診者の高齢化の傾向が見られており、発症年齢の上昇傾向があります」と紹介されました。
地域包括支援センターの方々からは、三鷹市でも地域によって認知症をめぐる状況は異なり、支援の内容も多様化していることや、当事者の認知症についての理解だけでなく家族の理解や受容が大切であること、そうした中にあって三鷹市では地域の人々の理解や支援が広がっていて専門職として心強いとの声が出されました。
お仕事を終えた後の夜間の研修会でしたが、参加者の皆様が私の講演を熱心に聴いていただき、その後の意見交換でも現状の課題について率直に話してくださったことに感銘を受けました。