障害者週間にあたって電話リレーサービスのご紹介。
12月3日から9日は障害者基本法に制定されている「障害者週間」です。
「障害者週間」の時期に、私は三鷹市長就任前に取組んでいた「情報バリアフリー」に関する「電話リレーサービス」についてのエピソードを紹介します。
電話リレーサービスは、聴覚や発話に困難のある聴覚障がい者等と、聴覚障がい者以外の人との会話を、通訳オペレータが手話・文字と音声を通訳することにより、電話で双方向につなぐサービスです。
私が三鷹市長に就任する前、大学教員時代の研究テーマの一つは「情報バリアフリー」でした。
ルーテル学院大学教授当時の1995年5月~1996年3月には郵政省「高齢者・障害者の情報通信の利活用の推進に関する調査研究会情報バリアフリー部会」の主査を務めました。
東京工科大学教授当時の1999年12月~2000年2月には車いす利用者であった八代栄太郵政大臣主宰の郵政省「情報バリアフリー懇談会」の構成員を務めました。
この研究会では「電話リレーサービス」の検討が行われました。
先日、1999年当時は郵政省通信政策局情報企画課課長補佐として「情報バリアフリー懇談会」を担当されていて、その後も交流のある総務省・大臣官房参事官の山碕良志さんと再会しました。
山碕さんは当時「誰もが使いやすいICTの普及」を担当して高齢者や障がい者の声をガイドラインにまとめてサービス提供者へ橋渡ししていました。
「電話リレーサービス」については、課長補佐在任中「情報バリアフリー懇談会」での提言等を踏まえて、2000年に本サービスに係る助成制度を初めて予算要求し、2001年の省庁再編の年には所属は「総務省情報通信政策局情報通信利用促進課」に改組されましたが、無事に予算化されて初めての助成制度がスタートしました。
山碕さんはその時の感激は忘れられないと話します。
「電話リレーサービス」は2002年より民間事業者により提供された後、2013年からは日本財団のモデル事業として実施されてきました。
電話は、即時的な意思疎通を遠隔地にいながら可能とする基幹的なコミュニケーション手段ですが、もっぱら音声による意思疎通手段ですから、聴覚障がい者等は介助を受けずに電話を利用することが困難です。
そこで、日常生活のコミュニケーションや最近の新型コロナワクチンの申し込みをはじめとした電話を利用した行政手続、職場における業務のやりとり、警察・消防への緊急時の速やかな救助の要請等には大きな困難がありました。
このような背景から2018年、聴覚障害者等による電話の利用の円滑化のため、公共インフラとしての「電話リレーサービス」の適正かつ確実な提供を確保する必要が国会で議論され、制度の整備が課題となり、政府で公共インフラとしての「電話リレーサービス」に関する法律案の検討が始まりました。
なんと、その法案作成の担当となったのが、2018年当時に総務省総合通信基盤局電気通信事業部事業政策課長を務めていた山碕良志さんだったのです。
およそ20年前に「電話リレーサービス」に係る助成制度創設を担当した山碕さんは、今度は公共インフラとしての法制度化担当者になるとは、このサービスと奇しきご縁があったということです。
山碕さんが担当した「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律」は2020(令和2)年に法律第53号として制定され、2020年12月1日に施行されました。
法律では、「公共インフラ」とするに際し、これまで「電話リレーサービス」が利用者側負担だけでは事業性の課題が解決しなかったことを踏まえ、電話提供事業者が負担金を納付し、負担の徴収・交付金の交付等を業務とする電話リレーサービス支援機関を通じて電話リレーサービス提供機関に交付金として交付する仕組みとなりました。
2021年1月、総務大臣は電話リレーサービス提供機関として一般財団法人日本財団電話リレーサービスを、電話リレーサービス支援機関として一般社団法人電気通信事業者協会をそれぞれ指定しました。
この法律に基づいて、今年7月に「公共インフラ」としての「電話リレーサービス」が開始され、以下のようなことが実現しています。
①24時間365 日対応
②緊急通報
③家族・友人との連絡
④お店への予約など
「誰一人も取り残さない」ために、身近な電話が、聴覚障がい者の皆様にとって、ようやく「公共インフラ」となったかげには、この制度とご縁が深かった山碕良志さんという一人の総務省官僚がいたこと、山碕さんと私は「情報バリアフリー」という命題でのご縁が続いていることを光栄に思います。