文部科学省総合政策局の男女共同参画共生社会学習・安全課の障害者学習支援推進室を訪ねました。
先日、文部科学省総合政策局の男女共同参画共生社会学習・安全課の障害者学習支援推進室の阿部圭但・第一係長、今井敏之助・第二係長、宮本二郎・室長補佐を訪問して、障害者の生涯学習に関する取り組みについて伺いました。
と申しますのは、今年の3月に「障害者の生涯学習を担う人材育成の在り方検討会」の「議論のまとめ(報告)」が公表されるとともに、『共生社会のマナビ(障害者の生涯学習支援入門ガイド・事例集)』と題する障がい者の生涯学習に関するわかりやすい冊子が発行され、私は特にユニークなデザインの『共生社会のマナビ』に注目したのです。
とても失礼な印象で申し上げにくいのですが、「文部科学省の発行物」とは思えない斬新なデザインの冊子です。
内容としては、幅広い事例が興味深く有意義であると思います。
冊子の冒頭には津田英二・神戸大学大学院教授による『障害者の生涯学習〜3つのキーワード』として、「学び」「障害の社会モデル」「合理的配慮」がせ説明されています。
そして、障害者の生涯学習の実践の多様性・政策の背景が説明された上で、「たまり場から生まれるインクルーシブな学び(国立市公民館)」「教育と福祉の連携(朝来市和田山生涯学習センター)」「障害者本人と一緒につくる学びの場(練馬区障害者地域自立支援協議会)」など9件の事例が紹介されています。
対話した3人の担当者は、「実は、このプロジェクトの主担当は国立市に戻ったのですよ」と教えてくださいました。
そこで、私は、4年間の文科省勤務を終えて国立市公民館に戻られている社会教育主事の井口啓太郎さんにメールを送り、『共生社会のマナビ』の取りまとめに感謝するとともに、担当者としての想いをお聞きしました。
するとご丁寧な返事をいただきました。
井口さんは文科省の障害者の生涯学習政策について2018年から4年間関わったとのことです。
1つの施策に集中的に取り組めたこと、また新たな社会教育・生涯学習の方向性を創っていくプロセスに関われたことは、社会教育現場一筋の井口さんにとって、本当に充実した時間であり、4年間の集大成として取り組んだのが障害者の生涯学習を担う人材育成の在り方検討会の「議論のまとめ(報告)」と『共生社会のマナビ』だったということです。
一般的には国の審議会の報告書等が一部の関係者にしか読まれない傾向があるなかで、本当に手に取りたいと思ってもらえるデザイン、本当に現場の役に立つ内容・構成にこだわった事例集をつくりたいと1年以上かけて作成したのが『共生社会のマナビ』だったのです。
井口さんが国立市で、デザインの視点を重視して社会教育関係の印刷物をつくってきた経験が活きたとのことです。
それにしても、井口さんを4年間の長きに渡り文部科学省に出向することを認められた国立市の市長・教育長はじめ幹部の皆様のご理解に敬意を表します。
私は、障害者の生涯学習にかかる人財に関する検討会の取りまとめや『共生社会のマナビ』を熟読することによって、今後は、生涯学習・社会教育の分野における障害者の視点に立った合理的配慮の充実がますます求められていることを確認しました。
そのためにも、今後の政策課題として、共生社会・社会的包摂の視点に基づいた現場の取り組みがさらに推進されるためには、実践事例の共有についての更なる支援や実践を推進するインセンティブとなる補助制度の整備などが課題であると受け止めました。