作曲家中田喜直さん生誕100年「水芭蕉コンサート」
5月27日、三鷹市に在住経験のある作曲家中田喜直さん生誕100年「水芭蕉コンサート』に招待されて鑑賞しました。
中田さんは1923年9月の関東大震災直前の8月に生まれ、「夏の思い出」「雪の降る街を」等3個千曲を作曲されました。
私の三鷹市長在任中に奥様の中田幸子さんのご理解により三鷹駅の発車時に「めだかの学校」が使用されるようになり、井の頭公園内に「ちいさい秋見つけた」の歌碑を建立できました。
こうしたご縁もあり、ありがたいことに、市長退任後も在任中と同様に水芭蕉コンサートにご招待していただいてきました♪
コロナ禍で没後20年記念コンサートは実現できずにいたことから、残念な想いのファンの皆様は多かったようで、この日の生誕100年記念コンサートの会場は二階席を含めて満席の様子でした。
司会はNHK「うたの絵本」初代うたのおねえさんで、「おかあさんといっしょ」に15年出演された眞理ヨシコさんです。
第一部は、同じくNHKのエグゼクティブ・アナウンサーをされていた柿沼郭さんのナレーションで、中田さんの生前の多様な取組みを紹介しつつ、「夏の思い出」のピアノ演奏、童謡や歌曲の歌唱、コンクールで入賞したピアノ曲納塚演奏などを通して、作曲家としての幅広い活躍を理解することができました。
第二部では、三鷹駅の発車ベルの「めだかの学校」の紹介から始まりました。そして、童謡の歌唱や、中田幸子さんが指揮をされたフェリス・フラウエンコーアによる女声コーラスが続きました。
中田さんは女声コーラスがピアノとの調和が一番美しいと感じていたそうで、なんと三百の合唱曲を作曲されたそうです。
今回出演されたのは令和4年度奏楽堂日本歌曲コンクール歌唱部門第1位のソプラノの櫻井愛子さん、バリトンの土屋広次郎さん、加来徹さんの歌声と、「2台のピアノのための軍艦マーチによるパラフレーズ」の演奏をはじめピアノの松下倫士さん、田中翔一朗さんで、その奥深い歌唱と素晴らしい演奏に魅了されました。
コンサートで歌われた童謡も、歌曲も、それぞれが決して長い曲ではありませんが、だからこそ、そのやさしさが胸を打ちます。
さて、プログラムの冒頭に、水芭蕉コンサート実行委員会による「歌は百年を羽ばたく」というメッセージが書かれています。
中田さんは陸軍少尉として、陸軍特別操縦見習士官となったそうです。
決死の覚悟で前線を転々としながら、一度も出撃することなく、一発の爆弾も投下せずに終戦を迎えられたことに胸を撫で下ろしたそうです。
中田さんは空から戦争を見て、さらに戦争の先を夢見ていたことは、戦後に作曲家として歩み出すことに大きな天啓であったようだと紹介されています。
結びにはこのように書かれています。
「平和はどこかにある楽園ではありません。まるで飛行機を操縦するように強い風のなかでも真っ暗な闇のなかでも私たちはそれを手放さずに前へと進ませねばならないものです。そこで、大切なのは、軽やかさだと中田の歌は教えてくれます。歌が声に羽ばたくように、ひとびとが軽やかに生きられることの大切さ。
生誕百年のいま、中田喜直の歌をさらなる百年へ、みなさんの思いをのせて。」と。
そのメッセージを水芭蕉コンサートのプログラムを通して確かに受け止めたように思います。