栃木県総合教育センターで講話をしました
9月14日、栃木県総合教育センター生涯学習部担当の【令和5(2023)年度 生涯学習・社会教育関係職員研修Ⅱ】第1日の講話を担当するために、宇都宮市を訪れました。
宇都宮駅には生涯学習部の井上昌幸部長が出迎えてくださいました。
井上部長とは、今年の1月に月刊誌の『社会教育』の2023年度の社会教育を展望する座談会でご一緒しましたので、お久しぶりの再会です。
車で30分ほどの緑豊かな環境の中、栃木県の農業試験場の前に総合教育センターは立地しています。
ちょうど、高校教員の研修も同時に行われていました。
図書室も大変に充実していて、栃木県の学校教育及び生涯学習・社会教育の文字通り「センター」であると感じました。
私が担当する講話のタイトルは「これからの生涯学習・社会教育行政の目指すもの~中央教育審議会議論の整理から~」(90分)です。
講話の内容は以下の通りです。
1.目指すべき【ウエルビーイング】の概念について
(1)中央教育審議会における教育振興基本計画についての審議から
(2)第11期生涯学習分科会における審議から
(3)こども家庭庁設立・こども基本法施行の趣旨から
(4)ウェルビーイングについての指標と調査結果
2.今後の生涯学習・社会教育の在り方を考える
(1)第11期生涯学習分科会での審議の整理から
(2)第12期生涯学習分科会における検討状況から
私の講話の後に、参加者による研究協議「ウェルビーイングの実現のための社会教育行政の取組を考える」が設定されていることもあり、中央教育審議会委員として、生涯学習分科会長として、次期教育振興基本計画部会委員として審議をしてきた経験をもとに、特に、【ウェルビーイング】の概念について、詳しく説明しました。
たとえば、2022年2月に文部科学大臣から次期教育振興基本計画について諮問された際には、検討すべき点として次のように記載されていました。
すなわち、「学習者の背景や特性・意欲の多様性を前提として、学習者視点に立ち、誰もが、いつでもどこからでも、誰とでも、自分らしく学ぶことができ、誰一人取り残されず、一人一人の可能性が最大限に引き出され、一人一人の多様な幸せであるとともに社会全体の幸せでもあるウェルビーイングが実現されるように、制度等の在り方を考えていく必要があります。これは幼児教育から高等教育まで一貫して追求しなければならない目標です。」
そして、「次期教育振興基本計画について、御審議を依頼する事項」として、「改正教育基本法の基本理念、現行計画の成果と課題、急速な技術革新、人口減少・高齢化の進展などの国内状況の変化、グローバル化やSDGs達成に向けた世界的な取組の進展といった国際環境の変化等を踏まえた今後の教育政策に関する基本的な方針について、特に、超スマート社会(Society 5.0)を念頭に置き、ウェルビーイングの観点も踏まえ、新型コロナウイルス感染症を契機としたオンライン教育を活用する観点など「デジタル」と「リアル」の最適な組合せ、及び、幼児教育・義務教育の基礎の上に、高等学校、大学、高等専門学校、専門学校、大学院まで全体が連続性・一貫性を持ち、社会のニーズに応えるものとなる教育や学習の在り方について」が提示されています。
そこで、第11期の中央教育審議会に設置された教育振興基本計画部会では、ウェルビーイングを、「身体的・精神的・社会的に良い状態にあることをいい、短期的な幸福のみならず、生きがいや人生の意義などの将来にわたる持続的な幸福を含む概念」であり、「多様な個人がそれぞれ幸せや生きがいを感じるともに、個人を取り巻く場や地域、社会が幸せや豊かさを感じられる良い状態にあることも含む包括的な概念」と位置付けて、【次期計画のコンセプト】として、【2040年以降の社会を見据えた持続可能な社会の創り手の育成】とともに、【日本社会に根差したウェルビーイングの向上】を位置づけ、答申しました。
今年の6月に閣議決定された「第4期教育振興基本計画」のコンセプトにこの2つが位置づけられ、ウェルビーイングは、「身体的・精神的・社会的に良い状態にあること。短期的な幸福のみならず、生きがいや人生の意義などの将来にわたる持続的な幸福を含む概念」とされています。
また、2023年9月4日にこども家庭庁から公表された【こども大綱についてのこども家庭審議会答申(中間整理案)】では、【こども大綱】がめざす方向性として、「全てのこども・若者が、日本国憲法、こども基本法及びこどもの権利条約の精神にのっとり、生涯にわたる人格形成の基礎を築き、自立した個人としてひとしく健やかに成長することができ、心身の状況、置かれている環境等にかかわらず、ひとしくその権利の擁護が図られ、身体的・精神的・社会的(バイオサイコソーシャル)に将来にわたって幸せな状態(ウェルビーイング)で生活を送ることができる社会」が示されています。
このようなウェルビーイングに関する検討の情報をお伝えした後に、現在の文部科学省中央教育審議会生涯学習分科会での検討状況について、一方で「地域の学びと実践プラットフォーム」としての役割を、社会教育人材・施設が連携して担うための施策に関して説明するとともに、コミュニティ・スクールを中心とする地域学校協働活動、リカレント教育、障がい者の生涯学習に関する検討状況や具体的な取組み事例等について紹介しました。
受講者の皆さまは、会場とオンラインのハイブリッドで熱心に傾聴してくださり、講話後に日頃の実践に根差した質疑が提起され永寧に応答しました。
そして、講話することで、私も学び直しをすることができました。
講話前や講話後に受講者の皆様と名刺交換をしたり短い対話をしましたが、中には、7月に茨城県庁で開催されたコミュニティ・スクールフォーラムでの私の話を聴いていただいた方もいらして、大変に心強く思いました。
まだまだ暑いとはいえ、「学びの秋」の到来です。