文部科学省中央教育審議会に高等教育に関する諮問がありました
文部科学省中央教育審議会総会に出席しました。
冒頭、このたび文部科学大臣に就任された盛山正仁文部科学大臣、青山周平文部科学副大臣、安江伸夫文部科学大臣政務官がそれぞれ就任のあいさつをされました。
そして、第1の議題は、「急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方について」の諮問がありました。
盛山大臣は、諮問の理由について丁寧に説明されました。
「今、学校で学んでいる子供たちが社会の中心になって活躍する 21 世紀半ばの社会は、あらゆる側面において、これまでの日本社会の仕組みの延長線上では対応できない事態に直面することが想定され、我が国の高等教育は、今まさに歴史の転換点に立っています。とりわけ、少子化は、我が国が直面する最大の危機です。」
との厳しい現状認識から始まります。
少子化だけではありません。
「コロナ禍を契機として遠隔教育が急速に普及し、その利便性と課題が明確になったことは、学生や教職員がキャンパスに集まって行われてきた従来の高等教育の在り方を抜本的に変える可能性も生じさせています。また、ウクライナ情勢をはじめ国際情勢が不安定化し、世界経済の停滞や国際的分断の進行の懸念も高まっている中で、留学生交流や高等教育機関の国際交流も大きな転換期を迎えています。加えて、我が国の研究力低下が指摘されている中で、研究力の強化が喫緊の課題」となっているのです。
さらに、「政府全体では、デジタルの力を活用した地方創生や、リスキリングによる能力向上支援などの労働市場改革」も進められていることにも注視が必要です。
そこで、一人一人の実りある生涯と社会の持続的な成長・発展を実現し、人類社会の調和ある発展に貢献するため、人材育成と知的創造活動の中核である高等教育機関の役割が一層重要になっている現状認識を踏まえて、学生が文理横断的に知識、スキル、態度、価値観を身に付け、真に人が果たすべき役割を実行できる人材を育成することが必要であるとともに、リカレント教育も重要であり、こうした人材育成が個人・社会のWell-beingの実現にも貢献することを認識した検討が必要ということです。
諮問では具体的には主な検討事項として4項目が挙げられました。
(1)2040年以降の社会を見据えた高等教育が目指すべき姿
(2)今後の高等教育全体の適正な規模を視野に入れた地域における質の高い高等教育へのアクセス確保の在り方
(3)国公私の設置者別等の役割分担の在り方
(4)高等教育の改革を支える支援方策の在り方
諮問の理由説明の後、盛山文部科学大臣から荒瀬克己中央教育審議会会長に諮問書が手交されました。
そして、諮問について、委員の意見交換があり、私は、概要、次の2点に絞って発言をしました。
①諮問の背景として、高等教育における役割としてリカレント教育も重要であり、こうした人材育成が個人・社会のWell-beingの実現にも貢献とありますが、実は私が分科会長を務めている今期の生涯学習分科会においては、「リカレント教育」「リスキリング」について本格的な検討を開始しています。
既に、経団連を代表する小路委員、連合を代表する金子委員、企業におけるリスキリングと大学についてリクルートの大久保委員からの報告を受けながら意見交換を行っており、次回は放送大学からリカレント教育の取組みについてヒアリングをする予定です。
生涯学習分科会では、少子長寿化の時代にあって、幼児から長寿の方まで、多世代それぞれの学びが有効に実現できますとともに、多世代交流の意義が深められるような生涯学習社会の在り方について検討しています。そこで、本諮問については主として大学分科会において審議が進められると想定していますが、私は、本諮問の検討について、生涯学習分科会での審議が貢献できることがあるのではないか、ぜひ貢献したいとの想いを述べました。
②私は、かねて、「司法制度改革推進本部裁判員制度・刑事検討会及び公的弁護検討会」の委員を務めていたこともあり、この数年、大学分科会法科大学院等特別委員会の委員を務めています。本特別委員会では、これまで、法科大学院の教員の皆様、未修者として弁護士になられている方を含む法曹界はじめ委員の皆様の審議によって、法科大学院協会の皆様の連携・協働が深化し、法科大学院、法学部の教育の質の向上と持続可能性に向けて、学部における法曹コース創設の導入、未修者教育にいかす共通到達度試験の取組みやオンデマンドビデオ教材の試作等が図られてきました。今年は法科大学院設立20年であり、法曹養成連携協定に基づく法曹コースや特別選抜によるいわゆる3+2の状況、今年度から実施される在学中受験等について実態を適切に把握し、検証していくプロセスに入っています。
法科大学院においては、学部と法科大学院の連携に加えて、法科大学院と司法研修所、自治体・企業等との連携についても推進がなされてきています。本特別委員会は大学分科会に位置づけられていますので、本特別委員会での検討が、他の学問分野の学部と大学院の関係や、他大学と連携の在り方、自治体や民間企業等との連携について、ぜひとも参考にしていただくことを提案致します。
以上、2点の意見を踏まえて、私は本諮問の意義を認識するとともに、だからこそ中教審の他の分科会や委員会等とその活動を有機的に連携し、その力を結集して、有意義な答申に向けて取り組んでいきたいとの想いを述べました。
高等教育は、初等中等教育、生涯学習・社会教育と密接に関連しています。
2040年の高等教育を展望することは、教育体系全体を見渡す必要があります。
仮に主として18歳が大学等に入学することを想定することだけが、高等教育の役割を考えるうえでふさわしいことでしょうか?
少子長寿化の時代にあっては、人が生涯にわたって学び続ける過程の、いつ、何歳の時であっても、高等教育機関において学びやすい環境づくりが求められると思います。
私は今後の審議に積極的に参画していきたいと思います。