エントリー

第19回日本こども学会議における学会企画シンポジウムにパネリストとして参加しました

第19回日本こども学会議における学会企画シンポジウムにパネリストとして参加しました

9月23日(土)24日(日)の2日間、東京都調布市内の白百合女子大学講堂で開催された、日本子ども学会主催「第19回こども学会議:子ども期のしあわせを考える~社会のなかでの子どものクオリティ・オブ・ライフ~」が開催されました。
日本こども学会は、こども科学専門の故小林登先生の呼びかけで、2003年11月に白百合女子大学で創立総会が開かれ創立された学際的な学会です。
創立20年目の今年、改めて白百合女子大学で開催された意義を、大会長としての責任を担われた白百合女子大学教授・お茶の水女子大学名誉教授の菅原ますみ先生は感慨深いご様子でした。
私は9月23日(土)午前中の「学会企画シンポジウム:”Happiness for all children:子どものしあわせが実現する社会・政策”「こども家庭庁への期待」にパネリストとして参加しました。
コーディネーターは、日本こども学会理事長で、お茶の水女子大学名誉教授の榊原洋一先生です。
パネリストのもうお一人は、NPO法人全国子育てひろば全国連絡協議会理事長の奥山千鶴子さんです。

私は「こどもまんなかまちづくりとウェルビーイング~こども基本法の理念の実現を目指して~」というテーマで、次の項目について報告しました。
1.【こども家庭庁】の基本姿勢と組織
2.【こども基本法】と自治体の責務
3.【こども家庭庁】が進める当面の課題と【こども大綱】
4.こどものしあわせ【ウェルビーイング】と
   【こども・若者の意見表明機会の保障】
2023年4月1日、こどもの権利を保障する【こども基本法】が施行され、【こども家庭庁】が設立されました。
【こども家庭庁】は「心身の発達の過程にある者(以下「こども」という)が自立した個人としてひとしく健やかに成長することのできる社会の実現に向け、子育てにおける家庭の役割の重要性を踏まえつつ、こどもの年齢及び発達の程度に応じ、その意見を尊重し、その最善の利益を優先して考慮することを基本とし、こども及びこどものある家庭の福祉の増進及び保健の向上その他のこどもの健やかな成長及びこどものある家庭における子育てに対する支援並びにこどもの権利利益の擁護に関する事務を行うことを任務」としています。
【ウェルビーイング】とは、身体的・精神的・社会的に良い状態にあること、短期的な幸福のみならず、生きがいや人生の意義などの将来にわたる持続的な幸福を含む概念で、多様な個人がそれぞれ幸せや生きがいを感じるとともに、個人を取り巻く場や地域、社会が幸せや豊かさを感じられる良い状態にあることも含む包括的な概念です。

【こども家庭庁】の基本姿勢は
①こどもの視点、子育て当事者の視点
②地方自治体との連携強化
③NPOをはじめとする市民社会との積極的な対話・連携・協働
であり、特にこどもや若者の意見を年齢や発達の程度に応じて政策に反映することです。
私は、こども基本法が制定する前に三鷹市長を務めていましたが、こども・若者の意見を聴く機会をもってきました。
たとえば、
①『こども憲章』策定時に児童生徒の声を反映するための「こどもサミット」開催
②小学校校舎、中学校体育館の建て替え時に、児童・生徒の意見を聴く機会の設置
③市長と語り合う会(10人程度の公募市民との対話)での最年少の幼稚園・保育園の年長児から、小学生、中学生、高校生、新成人、妊娠中の女性や育休取得の男性などなど
④教育委員会で・学校による「こども熟議」「おとなとこどもの熟議」を開催
⑤無作為抽出で市民会議・審議会等や市民討議会への参加を18歳以上の市民を対象にすることによる若者の参加
などの事例で、これらを紹介しました。
その上で、こども家庭庁が進める「こども・若者の意見反映の仕組みづくり」における手続きや留意点についても報告しました。

奥山さんは、「子どものしあわせを社会・政策で実現するために必要な視点~人生のスタート期を地域で応援する~」というテーマで、報告されました。
奥山さんは、ヒトの子育ては、こどもの成熟にたいへん時間がかかる一方、出産間隔は他の霊長類に比べて短いという特徴から、親だけではない親族、友人等周囲の人々を巻き込んだ共同養育(アロペアレンティング)を選択してきたとされていますが、現代の子育ては核家族が主流となり親族による共同養育には限界があることから、人生のスタートである乳幼児期のこどもと家庭を社会政策によって支え、社会的な共同養育の仕組みづくりが可能かを、自らが実践されているNPO法人による「ひろば事業」はじめ子ども子育て支援事業の実践を踏まえて、報告されました。
特に、①子どもと子育て家庭の現状の理解、②こども家庭庁とこれからの制度設計への期待、③地域で子ども子育て家庭のスタート期を応援するために必要な視点を中心に説明されました。
奥山さんは、政府の「こども未来戦略会議」の委員や、こども家庭庁「幼児期前のこどもの育ち部会」での検討に参画されているご経験も紹介されました。
2人の報告を踏まえて、榊原先生をコーディネーターとして、まずは今、こどもを産む親たちの中で赤ちゃんの世話を経験したことがある人は4人に1人しかいないということなどから、こどもにとっても、子育て中の親世代にとっても、地域の支援の必要性の高まりが確認されました。
その上で、乳幼児期の親、家族、親族以外の多様なおとなとの交流の意義、中高生や若者の赤ちゃんや幼児との関わりの機会の創出が、きょうだい数の少なくなった世代にとっても有意義であること、そのための利用者の相互支援や地域連携が有用であることなどを話し合いました。
会場からも、母子保健と子育て支援の連携の必要性、発達障がい児等多様な支援の必要性、「誰でも保育」の導入が検討される中にあって、待機児が課題の時に設立された小規模の保育施設等の今後の展開に向けた持続可能性に係る課題など、多くの実態に即した課題が提起され、課題の共有と解決に向けた方向性についての対話が深まりました。
こどものウェルビーイングを考える時、親を含むおとなのウェルビーイングの確保も考える必要があることを再確認しました。
私の担当が終わって会場を出ると三鷹市助産師会の皆様が待っていてくださいました。お1人は学び直しのために現在白百合女子大学大学院で菅原先生のご指導で学んでいるため、学会大会の事務局としてご参加でした。そして、助産師会の竹内会長は、フォーラムをわざわざ聴講に来てくださったのでした。

午後は、主催校企画シンポジウムⅠ「親の別居・離婚に直面する子どもへの支援の現状と課題」があり、聴講しました。
パネリストは以下の方々です。
企画・司会:
安倍嘉人(弁護士・元高等裁判所長官・家庭問題情報センター理事長)
パネリスト:
山本佳子(家庭問題情報センター相談員)
直原康光(富山大学講師)
池田清貴(弁護士・東京家庭裁判所調停委員)
小田切紀子(東京国際大学教授)
企画・司会の安倍弁護士とは、かねてよりのお知合いです。
また、池田弁護士は、こどもの虐待や困難について取り組んでいらっしゃることから、私が三鷹市長在任中に教育委員を依頼し、お務めいただいた方です。池田弁護士が、市長が主宰する、市長と教育委員を構成メンバーとする「総合教育会議」において、両親が離婚する際にこどもが受ける影響を最小限にする為に、離婚する夫婦でこどもがいる場合の親権や養育費等をめぐる事項説明や相談機関を記したパンフレットを作成し、離婚届を提出の市民に配布することとした経緯があります。
お2人の弁護士には本当にお久しぶりに再会し、近況を語り合いました。

私は子ども学会の会員ではありませんが、学会の学術集会に参加させていただく機会を得て、こどもの最善の利益の保障、ウェルビーイングの実現を理念とする【こども基本法】に依拠した【こども家庭庁】設立された今年にあって、今後は、家庭・学校・地域・職場・地域社会で推進する「こどもまんなか」の取組みの【連携】【協働】に向けて、学会の皆様の調査研究の進展との連携が期待されると思いました。

ユーティリティ

記事検索Entry Search

Search
キーワード

過去ログArchives

RSS Feed