『最新教育動向2024』(明治図書)に寄稿しました
12月に初版第1刷が刊行された『最新教育動向2024』(明治図書)に、「第4期教育振興基本計画」と「こども家庭庁の発足と取組」の2つの項目について寄稿しました。
「第4期教育振興基本計画」の策定に際しては、私は文部科学省第11期中央教育審議会の委員として、2022年2月、文部科学大臣から次期教育振興基本計画の策定について検討するよう諮問を受けました。
そして、同年3月に設置された教育振興基本計画部会(委員30名)の副部会長を務め、2023年2月まで合計14回開催して、議論を重ねた経緯があります。
その際、従来の審議でも行ってきたように教育関係団体ヒアリングやパブリックコメントを実施するとともに、特に印象的であったのは、2023年4月の「こども基本法」の施行を控えて、内閣府のユース政策モニターと委員との意見交換会の開催やアンケート調査を実施するなどにより、児童生徒学生を含む多様なステークホルダーから幅広く意見を募り、審議に反映するよう努めたことです。
また、計画部会をはじめとして、総会、生涯学習分科会、初等中等教育分科会、大学分科会及び他の委員会等における闊達な議論の反映に努めました。
こうした審議を踏まえて、2023年3月に中央教育審議会総会において、会長から文部科学大臣に答申が手交され、政府において検討が進められ、2023年6月16日に第4期教育基本計画が閣議決定されたのです。
こうして、私は「第4期教育振興基本計画」の策定過程に参画した一人として、この項目について記述することを大変に光栄に思います。
コンパクトに内容を説明する本書の趣旨から、字数に制約がありましたが、特に以下の事を紹介できたことは有意義と思います。
すなわち、今期の教育振興基本計画では、総括的な基本方針・コンセプトとして「持続可能な社会の創り手の育成」及び「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」を掲げています。
そして、5つの基本的方針と16の教育政策の目標、基本施策及び指標を示しています。
5つの基本的方針とは、
①グローバル化する社会の持続的な発展に向けて学び続ける人材の育成、
②誰一人取り残さず、全ての人の可能性を引き出す共生社会の実現に向けた教育の推進、
③地域や家庭で共に学び支え合う社会の実現に向けた教育の推進、
④教育デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進、
⑤計画の実効性確保のための基盤整備・対話 です。
2つ目の項目として、「こども家庭庁の発足と取組」について、書けたことも幸いでした。
私は2022年6月7日、参議院内閣委員会でこども家庭庁設置法案等とこども基本法が審議される際に、参考人として招致され、こども・子育て支援政策を推進した市長経験者として、この法案とこども家庭庁設立の意義について意見陳述した経験があります。
また、昨年度はこども家庭庁設立準備室の政策参与として、こども家庭庁設立後は参与として、主として「こども政策に係る自治体と国との連携」を担当していることから、こども家庭庁について、「最新教育動向」に紹介できることは大変に重要な意義があると考えて、執筆を幸いと受け止めました。
2023年4月1日、こども家庭庁の発足とこども基本法(令和四年法律第七十七号)が施行されたことは重要です。
議員立法で制定されたこども基本法には、国連「児童の権利に関する条約」の4原則を反映して、①差別の禁止、②こどもの最善の利益、③生命、生存及び発達に対する権利、④こどもの意見の尊重が規定されています。これまで日本にはこどもに関する施策や取組みの「共通の基盤」となる包括的な基本法はなかったところ、1994年に日本で批准されて29年目の2023年に、こどもの人権の保障を定めるこども基本法が制定され、施行されることになったことは、大変に有意義であり、こども家庭庁はこども基本法の理念を具体的に実現するための役所として設立されたことを確認する必要があります。
こども家庭庁は、こども基本法の基本理念を実現することを任務としていますので、その基本姿勢は、(1)こどもや子育て中の方々の視点に立った政策立案、(2)地方自治体との連携強化、(3)様々な民間団体とのネットワークの強化です。
そして、こども家庭庁の役割は、(1)内閣総理大臣が所管するこども政策の司令塔としての総合調整、(2)省庁の縦割り打破、新しい政策課題や隙間事案への対応、(3)保健・福祉分野を中心とする事業の実施等の推進です。
そこで、こども家庭庁設立後に当面取り組んでいる主たる課題として、2023年中の制定を目途とする「こども大綱」及び指針等の策定を紹介しました。「こども大綱」は閣議決定される基本的政策です。
他に、同じく閣議決定される「幼児期までのこどもの育ちに係る基本的な指針(仮称)」の策定や「こどもの居場所づくりに関する指針(仮称)」の策定(閣議決定)などであることも紹介しました。
この本では、中央教育審議会委員の内田由紀子さん、戸ヶ崎勤さん、貞廣斎子さんを含む、教育分野での研究や実践を深めていらっしゃる56名の執筆者が参加しています。その1人であることを光栄に思います。
どうぞ、最新の教育動向について、この本をご参考にしていただければ幸いです。