三鷹三田会のメンバーと三田キャンパスを訪問(その2)重要文化財「演説館」の公開日
先日、所属する三鷹三田会(三鷹市の慶應義塾大学同窓会)の事業である「One-day Culture三田キャンパスツアー」に参加したのは、ちょうど「慶應義塾三田キャンパス 建築プロムナード─ 建築特別公開日」の期間でした。
この事業の主 催は慶應義塾大学アート・センター「都市のカルチュラル・ナラティヴ」プロジェクトで、令和 5 年度 文化庁 Innovate MUSEUM事業の助成を受けているとのことです。
そこで、福澤諭吉の存命中から存在する唯一の建造物であるとともに、「三田演説会」「ウェーランド講演会」「名誉博士号授与式」などに使用される以外では通常閉館されていて、外部から眺めることしかできない「三田演説館」の内部に入ることができました。
まずは、参加者一同で、2017年に演説館前に移設された福澤諭吉先生の胸像の前で記念写真を撮影しました。
演説館は、竣工は1875(明治8)年 5月で、構造は木造2階建の寄棟造桟瓦葺屋根です。延床面積は192.16㎡ということで、決して広くはありません。
当時、慶應義塾の創立者である福澤諭吉先生が自らの資金によって日本最初の演説会堂として建設されたものです。
建設当初は図書館と塾監局の間にあったそうですが、1923年の関東大震災を経て、その後の1924年に現在の三田キャンパス南西の稲荷山に移築されたと言われています。
私は初めて内部に入りましたが、まず気づいたのが、演壇上部の福澤諭吉演説像です。
これは、は和田英作制作の原画を松村菊麿が1937(昭和12)年に模写したものであり、1960(昭和35)年に神戸慶應倶楽部から寄贈されました。
そして、聴衆が400名以上は座れるくらいの座席が用意されています。見上げると、2階の左右にはギャラリーが設けられていて、オーディトリアムの形式です。
建築物としての重要性から、1915年に東京府指定史跡建造物に指定され、1967年には国の重要文化財に指定されています。
こうして、慶應義塾大学三田キャンパスの演説館は、福澤諭吉先生の存命中から約150年の変遷を経験している建物です。
キャンパスに通う学生が日ごろ何気なく教室や図書館として利用している建物が、重要文化財であったり世界的な建築家の作品であったりすることは、大学や建築という学生を取り巻く環境の豊かさを感じます。
私は三鷹三田会の皆様の激励で演説館の演壇に立たせていただきました。そして、1、2分の即興のスピーチをしました。すると、お仲間の皆様は大きな拍手をしてくださいました。
慶應義塾大学の学部と大学院での学びを経験するとともに、卒業及び修了後も、非常勤講師や三田法学会及び三田社会学会のメンバーとして研究活動をしてきた私にとって、三田演説館の演壇に上がる機会をいただいたことは、改めて研究者として教育者として「謙虚」な気持ちをもたらしてくれました。
ちょうど、1人の男子学生がいましたので、演壇に立つことを促して、記念写真を撮りましょうと提案しました。すると、大学4年生で卒業論文を書いているとのことで、1人では写真の記録が残せなかったので、私が声をかけてよかったと言ってくれました。
私にとっても有意義な経験は、若い大学生にとっては、きっとさらに有意義な経験になるのではないかと思います。
そして、私も三田キャンパスに通っていた20代の青年時代を思い起こし、甘酸っぱい想いを噛みしめながら、次の見学先に向かいました。