私がお世話になっている美容師は『生涯現役』を貫く89歳の藤山さん
『生涯現役』という言葉がありますが、それを実行するには、並大抵ではない努力が必要と思います。
ただ、私の身近には、それを実現されている方が多くいらっしゃいます。
そのうちのお一人は、1月に89歳になられた藤山陸也さんです。
藤山さんは、私が学生時代から約50年間、お世話になっている三鷹市内の私のご近所で美容室を経営されている美容師です。
藤山さんは弱酸性のトリートメントやパーマがご専門で、お若い頃は、美容師の皆様に美容技術を教える講師として、全国を飛び回っていらっしゃいました。
私にとって特に印象的な出来事は、私が初めてのこどもを出産してまもなく、その頃は通勤が遠い大学に勤務していたこともあったのか思いがけず小さいとはいえ、ワンコインの大きさの「円形脱毛症」になった時の対応です。
仕事と育児の心理的なストレスが要因とは思いましたが、藤山さんにご相談して、弱酸性のトリートメントを何度かしていただいていると、気がついた時には治っていました。
藤山さんは、「トリートメントそのものの効果だけでなく、それをする間にゆったり過ごして、短時間でも子育てや仕事を忘れて居眠りすることなどが有効だったのですよ」と、優しくおおらかに対応してくださいました。
また、私の母もトリートメントをしていただいてきたおかげさまで、晩年まで髪の毛は黒く、その健康を守られました。
そして、三鷹市長在任中に和服を着る機会には、私にはあまり時間がないことから、本当に手際良くアップにしてくださいました。カットなども時間を十分に取れない中、その技術力で短時間に対応してくださいました。
数年前に、藤山さんが加齢による症状を回復するために整形外科の手術を受けられた時には数ヶ月休業されました。
入院中に描かれた絵は、美容室に飾られていて、入院中も手を使われていたことに感激します。
その時は、代々木で美容室を開業されている息子さんのお世話になりました。息子さんも、藤山さんと同じように弱酸性の技術を磨き、ヘアーデザインで受賞されたご経験をお持ちです。
とはいえ、藤山さんはまもなく、完全予約制で復帰されましたので、私は通い慣れた藤山さんの美容室に通い続けています。
先日、「私が若い頃は、男性の美容師はそれほど多くはなかったけれど、生涯かけてする意義がある仕事と考えて、特にカットの技術と弱酸性の技術を磨いてきたことで、現在もお客様に信頼されていることをありがたく、誇りに思います」と語ってくださいました。
そして、若い頃は従業員もいたけれど、今は「生涯現役」を実行する傍らに、同じ美容師である奥様のお支えがあることにも感謝されています。
私が「89歳のお誕生日おめでとうございます」と申しますと、藤山さんは、「来年は90歳になるわけですから、これまで迷ったこともあるけれど、今しばらくは、できる限りこの仕事を続けていくつもりですから、また、来月お待ちしています」と、微笑んでくださいました。