【中央教育審議会総会】で、盛山文部科学大臣から【社会教育】に関する諮問がありました
6月25日(火)、文部科学省中央教育審議会第138回総会に委員として出席しました。
私は、生涯学習分科会長として、5月の分科会の最終的な審議を経て6月にまとめた『第12期中央教育審議会生涯学習分科会における議論の整理~全世代の一人ひとりが主体的に学び続ける生涯学習とそれを支える社会教育の未来への展開;リカレント教育の推進と社会教育人材の養成・活躍のあり方~』について、その概要を報告しました。
まず、『第4期教育振興基本計画』及び『第11期の分科会の議論の整理』を踏まえて、今期は特に、「生涯学び続ける社会の実現及びすべての人のウェルビーイングを目指したリカレント教育」と、「すべての人のウェルビーイングにつながる地域コミュニティを支える社会教育人材のあり方」の2つのテーマについて重点的に取りまとまたことを話しました。
「生涯学習をめぐる状況と目指すべき姿」については、「人生100年時代に、誰もが生涯を通じて意欲的に楽しく学び続けられる社会」として、「デジタル化の恩恵を享受し誰一人取り残されない社会」、「社会的包摂への対応」を今後の方向性としていること、生涯学び続けるためには、学校教育段階での学びの習慣の形成が非常に大切である点について明確にしたことを報告しました。
そして、社会教育人材には、地域コミュニティの基盤を支える上で、引き続き大きな役割が期待されるということを話しました。
そして、「社会人のリカレント教育」を考察する時、企業、社会人、高等教育機関のそれぞれの視点に立った意義を確立し、相互の連携が重要であることを報告しました。
さらに、放送大学や専門学校、学習歴のデジタル化、障害者の生涯学習、外国人の日本語の学習についての審議経過を報告し、特別部会の審議を行った「社会教育人材」の重要性について報告しました。
最後に、「今後の展望」として、今期第12期の分科会での審議を通じて、社会教育を必要とする社会情勢は、『社会教育法』が制定された75年前の昭和24(1949)年から大きく様変わりしているとの認識が強く共有されたこと、本日、私の報告の後になされる「諮問」の重要な意義について重く受け止めていることを話しました。
いくつかの質疑をいただき、熱心に回答しましたが、今後の検討の糧となりました。
そして、他の報告等についての意見交換の後、盛山正仁文部科学大臣が会議に参加され、荒瀬克己会長(独立行政法人教職員支援機構 理事長)あてに【地域コミュニティの基盤を支える今後の社会教育の在り方と推進方策について】の諮問が行われました。
盛山大臣から、この諮問の理由として以下のことが話されました。
●昭和24年6月に社会教育法が制定されてから、75年が経ち、地方公共団体や関係機関・団体等をはじめ、各般におけるたゆまぬ努力により、社会教育の振興が図られてきた一方、社会情勢は大きく様変わりし、人口減少・少子化の深刻化、地域コミュニティ・交流の希薄化、デジタルトランスフォーメーション、グローバル化の進展等により、学校・社会が抱える複雑化・困難化した課題の解決や、人生100年時代における共生社会や「こどもまんなか」社会の実現に向けた対応が求められている。
●高校や大学等の進学率の高まりや様々な学習機会の増加など、社会教育に求められる役割やニーズが変化している。
●令和5年6月に『第4期教育振興基本計画』を閣議決定し、「2040年以降の社会を見据えた持続可能な社会の創り手の育成」と「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」
という総括的な基本方針を掲げ、社会教育による「学び」を通じて人々の「つながり」や「かかわり」を作り出し、協力し合える関係づくりの土壌を耕しておくことで、持続的な地域コミュニティの基盤を形成することが求められている。
●社会教育の拠点として社会教育施設の機能強化や、社会教育主事・社会教育士等の社会教育人材の養成及び活躍促進等を通じた社会教育の充実を図る必要がある。
●第12期生涯学習分科会では、本年6月に議論の整理がとりまとめられ、全世代の一人ひとりの主体的な学びを尊重し、個人の幸せと他者との関係性の構築といったウェルビーイングを目指す上で、障害者や外国人などの社会的包摂の観点も含めた社会教育の提供が十分に確保されることが不可欠であるとされている。
●社会教育の連携分野や担い手が多様化し裾野が拡大する中、地域コミュニティの基盤を支えるために社会教育人材は重要な役割を担っており、その質的向上・量的拡大に向けた養成及び活躍促進の在り方について今後の施策の方向性が示されている。
●これらの方向性を土台とし、社会の変化を踏まえつつ施策の更なる深化を図るべ
く、社会教育の新たな在り方を見つめ直し、社会教育が果たすべき役割、担い手で
ある人材、その活動、国・地方公共団体における推進方策等について、次の事項を
中心に審議をお願いする。
第一に、社会教育人材を中核とした社会教育の推進方策について
第二に、社会教育活動の推進方策について
第三に、国・地方公共団体における社会教育の推進体制等の在り方について
この他、地域コミュニティの基盤を支える社会教育の在り方と推進方策に関連し、必要な事項について
私は、この諮問を受けて、その審議を主として担当する生涯学習分科会長として、要約すると次のように発言しました。
●「社会教育法」が制定されて75年の今年、【地域コミュニティの基盤を支える今後の社会教育の在り方と推進方策について】の諮問があったことの意義は重い。
●激動する社会の中で、学校教育はもちろん重要ですが、懸命に生きるために主体的に学ぶ国民・市民に寄り添う社会教育の在り方を検討することは本当に有意義。
●本諮問について主として検討を行うことになる生涯学習分科会長として、皆様とともに、誠心誠意、適切な答申に向けて検討を進めて行きたい。
会の終了後、盛山文部科学大臣、荒瀬会長と、主としてその審議を担当する私とで、改めて諮問の趣旨への想いを確認しました。
私たちが、人口減少・少子化の深刻化、地域コミュニティ・交流の希薄化、学校が抱える問題の複雑化・困難化といった様々な課題に対処しつつ、人生100年時代の到来、デジタル社会・障害者や外国人等を含む共生社会・「こどもまんなか」社会の実現といった民主主義国家としての現代的ニーズに対応するためには、社会教育の新たな在り方を展望し、社会教育が果たすべき役割、若者を含めた担い手である人材の養成やその活躍の在り方、国としての推進方策等についての検討が必要です。
改めて、本諮問の重みを強く受け止めています。