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三鷹三田会で大和田俊之教授による【アメリカ大統領選挙と音楽】についての講演を聴きました

三鷹三田会で大和田俊之教授による【アメリカ大統領選挙と音楽】についての講演を聴きました

先日、慶應義塾大学 の卒業生(塾員)で構成される同窓会「三鷹三田会」の第32回総会に出席しました。
笠嶋久典会長の挨拶の後、慶應義塾の塾員センター部長の大友正敏さんから、慶應義塾の最近の状況について報告がありました。
私は、今年は大学卒業50年の年であり、コロナ禍で縮小されていた【入学式】や【招待会】への招待を受けて、学友たちと再会する機会が増え、充実している幸いを感じながら、現在の学生や教職員の皆さんの、学問やスポーツ、芸術文化等での活躍を頼もしく聴きました。
そして、事業報告や予算決算等の議事の可決の後で、ゲストとしてお迎えした慶應義塾大学法学部の大和田俊之教授による『アメリカ大統領選挙と音楽』と題する講演を傾聴しました。 

大和田教授は、1996年慶應義塾大学経済学部卒業後、同志社大学大学院アメリカ研究科前期博士課程を修了して、2004年に慶應義塾大学大学院文学研究科英米文学専攻後期博士課程を修了した新進気鋭の研究者です。
特に、2011年に発表した著書『アメリカ音楽史 ミンストレル・ショウ、ブルースからヒップホップまで』では、第33回サントリー学芸賞(芸術・文学部門)を受賞されています。
2020年から21年までのコロナ禍には、ハーバード・イェンチン研究所で客員研究員として研究と講義を担当されました。

その日の『アメリカ大統領選挙と音楽』と題する講演では、特に、歌手のテイラー・スウィフトをめぐるエピソードに焦点を当ててお話してくださいました。
もともとカントリー・ミュージックの聖地ナッシュヴィルでデビューしたテイラー・スウィフトは、しばらくカントリーポップのシンガーとして活動したのですが、2010年代に入り、徐々にカントリー色を払拭し、メインストリームのポップスへと路線変更を図りました。
アメリカ大統領選では、レディ・ガガやケイティー・ペリーなどが民主党候補を応援したのに対して、彼女は決して支持政党を明らかにすることはなかったそうです。

というのは、デビュー以来彼女を支えてきたカントリー・ミュージック界のファンは、相対的に共和党支持者が多いという背景があったようで、支持政党の表明には躊躇があったのではないかとのことです。
ところが、トランプが大統領になっ後で、彼女は突然民主党支持を表明し、前回の大統領選では正式にバイデン・ハリス陣営をサポートしています。
実はカントリー・ミュージックを聴く若い世代のファンが増えており、それを裏付けるかのようにナッシュヴィルを擁するテネシー州デヴィッドソン・カウンティーはかなり前から民主党支持者が多くなっていることもあると説明されました。
従来は、テネシー州自体は強固な「赤い州」(共和党支持州)であり続けているので、ナッシュヴィルは「赤い州の中の青い町」となっているとのことです。
大和田教授は、民主党が、相対的に「労働者の権利を守るブルーカラーの党」から、「女性やアフリカンアメリカンなどマイノリティーの権利を重んじるアイデンティティ・ポリティクスの党」へと変化しているのではないかと推察しています。
音楽で表すならば、ブルース・スプリングスティーンの党からテイラー・スウィフトの党へと。
そこで、前者のファンを構成する白人労働者が、トランプを支持するようになったではないかと考察しています。

大和田教授はいずれにしても、アメリカの「分断」は解消されていないようだと語ります。
それは華やかなカルチャーに彩られる世界と、音楽すら持つことを許されなくなった世界の対立であり、次期大統領はこの2つの世界の融和を求められるはずだと語ります。
そして、いわゆる「音楽配信(ストリーミング・サービス)」に代表されるメディアの変化も軽視できないと語ります。
昨今のアメリカの娯楽産業がリベラルの傾向を強めていることも無関係ではないようです。
最近では、アカデミー賞やグラミー賞などにおいて、マイノリティーの候補者が相対的に少ないことが問題とされていますが、そうした批判があがることそのことに、理想としての【多文化主義】が社会の前提とされていることが示されているとも言えます。

大和田先生の、音楽という芸術文化を切り口とした大統領選挙に関する分析は、きわめてユニークであり、文字通り「興味深く」お話をお聴きするとともに、今回のアメリカ大統領選挙についても、関心をもっていきたいと思いました。

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