エントリー

【総務省統計委員会第3回デジタル部会】で部会長として【デジタル経済】を審議する会議の進行をしました

【総務省統計委員会第3回デジタル部会】で部会長として【デジタル経済】を審議する会議の進行をしました

今年の2月に設置され、私が部会長を務めている【総務省統計委員会第3回デジタル部会】が会議室参加とオンライン参加のハイブリッド方式で開催されました。
【公的統計基本計画】など様々な政府の取組みに於いて、【統計対象としてのデジタル経済の把握の必要性】と、【統計作成プロセスのデジタル化の必要性】が提起されています。
すなわち、社会のデジタル化がもたらす経済活動に見られる社会や生活の変動を正しく把握する必要性と、統計調査そのものにおけるデジタル技術の活用・集計、行政情報やビッグデータなどの様々なデータソースの活用、デジタル手法を用いたデータ収集や調査結果の利用の在り方などについての検討の必要性が指摘されているのです。

そこで、このような使命を果たすために、公的統計についての審議を担う統計委員会に【デジタル部会】が設置されたことになります。
私以外の構成員は以下のメンバーです(敬称略)。
●會田雅人:滋賀大学データサイエンス・AIイノベーション研究推進センター特任教授
●小西葉子:独立行政法人経済産業研究所上席研究員
●中川郁夫:株式会社ソシオラボ代表取締役
●竹村詠美:Peatix Inc. 共同創設者・アドバイザー
●細川 努 :総務省デジタル統括アドバイザー
●南 和宏:統計数理研究所データ科学研究系教授
●安井清一:東京理科大学創域理工学部経営システム工学科准教授

3回目の会議では。まずは、会議の構成メンバーでもある株式会社ソシオラボ代表取締役の中川郁夫さんに、【デジタル経済に関する考察~取引モデルの変化と市場の構造変革~】と題して、現代社会の経済システムの把握の在り方について報告していただきました。
中川さんは、大阪大学招へい准教授、一般社団法人DeruQui,発起人・理事、杉並区デジタル戦略アドバイザー、高岡市情報化推進アドバイザーなどもされています。
中川さんは、現代社会における経済モデルは、産業構造が生産と流通の視点からエコシステムの視点に転換していることを踏まえると、【匿名市場から顕名市場へのシフト】と捉えることができると提起します。
すなわち、【デジタルによる「つながり」は、「個客接点」のデジタル化を促し、「モノとカネの交換」だけではなく、「顕名」モデルという多様な「取引」を可能にする】と指摘するのです。
まさに、【交換の市場】から、【共創・つながりの市場】へと移行していることを直視する必要性を提起されています。
そして、ご自身が調査された海外の事例を踏まえて、【顕名市場】でもは、個客一人ひとりの体験 (個客価値) を最大化することが可能となり、取引コストが下がる傾向、取引量は増える傾向がみられるなど、【経済が自立的に発展する可能性】を示唆しました。

次に、慶應義塾大学経済学部教授の大久保敏弘さんをお招きして、【デジタル経済の進展と統計的把握】と題して報告をしていただきました。
大久保先生は、グローバリゼーション・経済安全保障、産業集積と地域経済、地方創生、デジタル経済などを研究テーマとされています。
そして、多くの統計調査、特に、同じ対象に繰り返し調査を行う「パネル調査」に参加されていますので、この日は、特に【大久保・NIRA調査:テレワーク就業者実態調査】のデータを紹介しながら、デジタル経済をめぐる統計調査の意義と課題等について報告されました。
たとえば、これまでの就業者・家計パネル調査の経験から、回答者自身によるバイアスがみられて、それが回答義務や報酬を与えても消えない【セルフリポート問題】があることを課題として提起されました。
それでも、地道に【データ】を収集し、【データ】を解読することが必要で、そのためにも、デジタル経済の進展についての国民の理解を深めることを可能にするデータ収集の努力が必要と指摘します。
そこで、報告の中でデジタル経済、シェアエコノミーなどの新しい経済の動きを把握するためには、以下の3類型が考えられると紹介しました。
• 案1. 既存の政府統計に新たな質問項目を入れる。
• 案2. 新たな政府統計を作る。
• 案3. 様々な調査を収集し「ダッシュボード」を作る。(例:幸福度調査)
大久保先生は、特に、この案3が有力と提案されました。
そして、デジタル経済の下では今までの経済と大きく変化するので今までの政策が不要になったり、全く別の視点の政策が必要になることや、時系列での調査が必須であり調査は単発ではなく、同じ質問・形式を繰り返すことや定点調査が有意義と提起されました。
現代の社会、経済、生活、地域社会の変動を【デジタル化】という用語のみで表現することはできませんが、【デジタル化】を視点に置き、社会の実相を分析しようとするうえで、この日も重要な概念や分析枠組み(フレームワーク)を提起していただいたように思います。

公的統計とデジタル化をめぐる諸課題については、関係府省等の様々な取組が進められていますが、今後もその状況を注視しつつ、その取組と連携し、相互に前進する方向で、今後も検討をしていきたいと思います。
この日の会議室参加のメンバーは以下の通りです。
【前列左から、大久保先生、中川さん、會田さん、南さん、安井さん、
後列左から、谷本信賢・統計委員会担当室長、清原、北原久・政策統括官(統計制度等担当)、山田幸夫・官房審議官(統計制度等担当)】

ユーティリティ

記事検索Entry Search

Search
キーワード

過去ログArchives

RSS Feed